新そよ風に乗って 〜焦心〜
エッ……。
高橋さんに、キスをされるだろうと思っていた。けれど、そんな高橋さんの接近に、何故か怖くて、苦しく耐えられなくなって、思わず目を瞑ってしまった。
そう……遠藤主任とのキスの場面が、フラッシュバックしてきてしまったから。
でも高橋さんは、そんな私に何もしなかった。
「フッ……。大丈夫だ。何もしないから、安心しろ」
高橋さん……。
高橋さんは、右手の人差し指で私の唇に触れると、右端から左端まで唇をゆっくりなぞりながら微笑んだ。
高橋さんの優しいその眼差しは、気のせいか、どことなく物悲しげに感じられる。でも、高橋さんの指が私の唇から離れた時、一瞬、鋭い視線に変わったのが分かった。
私が、高橋さんを拒否しそうになったのが分かった?
そんな気持ちだったことを、高橋さんに見透かされたの?
高橋さんに、気づかれてしまったの?
だから、何もしなかったの?
「ごめんなさい」
「何に対しての、ごめんなさいなんだ?」
「えっ? それは……」
言葉に詰まってしまった。
何に対しての?
私は、何に対して高橋さんに謝ったんだろう?
きっと、それは遠藤主任とキスをしてしまったから。
「私が……私が、遠藤主任と……」
「いいか?」
すると、高橋さんが私の両腕を優しく掴んだ。
「事実は事実として……。しかし、それをどうこう言うつもりは全くない。お前に非はないだろう? ただ、もし俺に謝るとしたら……だ。それは……」
「高橋さん?」
「フッ……。そんなことを言ったら、俺なんてどれだけ謝らなきゃいけないんだよ」
はい?
それって、もしかして……とんでもなくキスの経験が、高橋さんは豊富だってこと?
うわっ。
そ、それは、嫌だぁ。
「何、難しい顔になったり、忙しくキョロキョロと百面相してるんだ?」
ハッ! しまった。
高橋さんの過去を、何となく妄想して想像していたら、離脱して過去に行ってしまっていたらしい。
「あっ。い、いえ、その……べ、別に何でもないで……キャッ……」
高橋さんが少し離れていた私を引き寄せ、先ほどより力を込めて抱きしめた。
「義を見てせざるは、勇無きなり。俺は、人としてそうはありたくない」
「高橋さん……」
「だから、心配するな。大丈夫だから」
ああ。きっと私は……。
高橋さんに、キスをされるだろうと思っていた。けれど、そんな高橋さんの接近に、何故か怖くて、苦しく耐えられなくなって、思わず目を瞑ってしまった。
そう……遠藤主任とのキスの場面が、フラッシュバックしてきてしまったから。
でも高橋さんは、そんな私に何もしなかった。
「フッ……。大丈夫だ。何もしないから、安心しろ」
高橋さん……。
高橋さんは、右手の人差し指で私の唇に触れると、右端から左端まで唇をゆっくりなぞりながら微笑んだ。
高橋さんの優しいその眼差しは、気のせいか、どことなく物悲しげに感じられる。でも、高橋さんの指が私の唇から離れた時、一瞬、鋭い視線に変わったのが分かった。
私が、高橋さんを拒否しそうになったのが分かった?
そんな気持ちだったことを、高橋さんに見透かされたの?
高橋さんに、気づかれてしまったの?
だから、何もしなかったの?
「ごめんなさい」
「何に対しての、ごめんなさいなんだ?」
「えっ? それは……」
言葉に詰まってしまった。
何に対しての?
私は、何に対して高橋さんに謝ったんだろう?
きっと、それは遠藤主任とキスをしてしまったから。
「私が……私が、遠藤主任と……」
「いいか?」
すると、高橋さんが私の両腕を優しく掴んだ。
「事実は事実として……。しかし、それをどうこう言うつもりは全くない。お前に非はないだろう? ただ、もし俺に謝るとしたら……だ。それは……」
「高橋さん?」
「フッ……。そんなことを言ったら、俺なんてどれだけ謝らなきゃいけないんだよ」
はい?
それって、もしかして……とんでもなくキスの経験が、高橋さんは豊富だってこと?
うわっ。
そ、それは、嫌だぁ。
「何、難しい顔になったり、忙しくキョロキョロと百面相してるんだ?」
ハッ! しまった。
高橋さんの過去を、何となく妄想して想像していたら、離脱して過去に行ってしまっていたらしい。
「あっ。い、いえ、その……べ、別に何でもないで……キャッ……」
高橋さんが少し離れていた私を引き寄せ、先ほどより力を込めて抱きしめた。
「義を見てせざるは、勇無きなり。俺は、人としてそうはありたくない」
「高橋さん……」
「だから、心配するな。大丈夫だから」
ああ。きっと私は……。