新そよ風に乗って 〜焦心〜
「ああ。ちょっと、聞きたいんだが……」
何のことだろう?
私、此処に居ていいのかな?
そうだ。ちょっと、トイレにでも行って来よう。
「お前も、一緒に聞いておけ」
エッ……。
椅子から立ち上がった私を、高橋さんが制止した。
「は、はい」
「単刀直入に聞くが、力をあまり使わないで相手の関節とか痛める簡単な方法って何だ?」
「んがぁ? 何だってぇ?」
高橋さんが明良さんに言わんとしていることが、何となく理解出来た。きっと、昨日の護身術に関係していること。つまり、遠藤主任に対してのことで、だから高橋さんは私にも一緒に聞いておけって。
「それは、何? 体のどこでもいいわけ?」
「ああ。難しいのは駄目だが、咄嗟の時に力をあまりかけなくても簡単に相手にダメージを与えられる方法」
「何か、注文多いな。うーん……。それだったら足なら臑を蹴るとか、そういう感じでいいの?」
「そうそう」
明良さんは、顎に手をやり少しだけ考えていた。
「それなら、いちばん手っ取り早いのは指だね」
「指?」
高橋さんが、明良さんに問い返した。
「そう。陽子ちゃん。ちょっと、いい?」
「あっ。はい」
明良さんが、怪我をしていない私の右手を持った。
「人の指ってさ……。この向きは強いんだけど、こっちの向きは案外弱いんだよね。ちょっと力を加えただけでも、直ぐ捻挫や骨折とかになるから」
「そうなんですか?」
「うん。だから掌側に指を曲げるのは難なく出来ても、逆に手の甲側に曲げるのは痛さを伴うから、ある程度のところまでしか曲がらないんだ。稀に関節が柔らかい人もいるけど、大多数の人はそれ以上曲げようとすると負荷が掛かりすぎて、指の関節や骨が悲鳴をあげる」
知らなかった。
「あと、指を手の甲側に向けながら捻ると確実に骨が折れるね。指の付け根は、ある程度頑丈だけど第二関節部分からいっちゃうと思うよ。こうね?」
明良さんが、私の指で曲げる方向を少しだけやって見せてくれた
「でも咄嗟の時だったら、もう力任せに手の甲側に指を曲げれば勢いもついてるから自然と捻りも入っちゃうかもしれないね。言えることは、指は数本持って曲げるより1、2本の方がダメージは大きい。力のない人や手の小さい人には、この方法はより効果的だよ」
へぇ……明良さんって、凄いな。
「貴博様。こんなところで、よろしい?」
「おお。流石だな。参考になったよ。ついでに、ランチもよろしく」
「何だ、それ?」
何のことだろう?
私、此処に居ていいのかな?
そうだ。ちょっと、トイレにでも行って来よう。
「お前も、一緒に聞いておけ」
エッ……。
椅子から立ち上がった私を、高橋さんが制止した。
「は、はい」
「単刀直入に聞くが、力をあまり使わないで相手の関節とか痛める簡単な方法って何だ?」
「んがぁ? 何だってぇ?」
高橋さんが明良さんに言わんとしていることが、何となく理解出来た。きっと、昨日の護身術に関係していること。つまり、遠藤主任に対してのことで、だから高橋さんは私にも一緒に聞いておけって。
「それは、何? 体のどこでもいいわけ?」
「ああ。難しいのは駄目だが、咄嗟の時に力をあまりかけなくても簡単に相手にダメージを与えられる方法」
「何か、注文多いな。うーん……。それだったら足なら臑を蹴るとか、そういう感じでいいの?」
「そうそう」
明良さんは、顎に手をやり少しだけ考えていた。
「それなら、いちばん手っ取り早いのは指だね」
「指?」
高橋さんが、明良さんに問い返した。
「そう。陽子ちゃん。ちょっと、いい?」
「あっ。はい」
明良さんが、怪我をしていない私の右手を持った。
「人の指ってさ……。この向きは強いんだけど、こっちの向きは案外弱いんだよね。ちょっと力を加えただけでも、直ぐ捻挫や骨折とかになるから」
「そうなんですか?」
「うん。だから掌側に指を曲げるのは難なく出来ても、逆に手の甲側に曲げるのは痛さを伴うから、ある程度のところまでしか曲がらないんだ。稀に関節が柔らかい人もいるけど、大多数の人はそれ以上曲げようとすると負荷が掛かりすぎて、指の関節や骨が悲鳴をあげる」
知らなかった。
「あと、指を手の甲側に向けながら捻ると確実に骨が折れるね。指の付け根は、ある程度頑丈だけど第二関節部分からいっちゃうと思うよ。こうね?」
明良さんが、私の指で曲げる方向を少しだけやって見せてくれた
「でも咄嗟の時だったら、もう力任せに手の甲側に指を曲げれば勢いもついてるから自然と捻りも入っちゃうかもしれないね。言えることは、指は数本持って曲げるより1、2本の方がダメージは大きい。力のない人や手の小さい人には、この方法はより効果的だよ」
へぇ……明良さんって、凄いな。
「貴博様。こんなところで、よろしい?」
「おお。流石だな。参考になったよ。ついでに、ランチもよろしく」
「何だ、それ?」