新そよ風に乗って 〜焦心〜
「おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
ゲストルームに向かうと、高橋さんも自室へと入っていったのか、ドアを閉める音が後ろで聞こえた。
同じ屋根の下に居ながら、お互い違う部屋で寝る。先ほどのことを思い出すと、また怖くなってしまうので、なるべく考えないようにしようと思い、明日の朝起きる時間を携帯のアラームにセットをしようと携帯の画面を開いた。
あれ?
気が動転していたこともあって、携帯の画面をランチの後から開いていなかったため、メールが来ていることに気づかなかった。
画面を開いて見ると、送信者は明良さんだった。
明良さんからメール……何だろう?
エッ……。
明良さんのメールには、今度の週末に明良さんの別荘に、高橋さんと仁さんと泊まりに行くから、一緒に来ないかというお誘いだった。それと……このことは、何故か高橋さんには内緒にしておいて欲しいからと……。何故、高橋さんには内緒なのかな? それで、都合が悪かったらメールして欲しいと書いてあった。
今度の週末は特に何もないし都合は悪くないけれど、女の子1人だけなのかな? いずれにしても、明日辺りに明良さんにメールしてみよう。今は、とにかく査問委員会のことで頭がいっぱいだった。
ベッドに横になって目を閉じると、先ほどの事務所で怖かった遠藤主任の顔とあの場面が 繰り返し蘇ってきてしまう。そのたびに気を取り直そうとして何度も寝返りを打つが、一向に眠れそうにない。
そうだ。気分転換に、ベランダに出てみようかな。
パジャマは高橋さんから借りたけれど、とても大きくダボダボで袖もズボンの裾も何折りもして着ていたので、裾を引っ掛けないように少しパジャマのズボンをたくし上げながら静かにサッシを開けてベランダに出た。
うわっ。寒い!
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