新そよ風に乗って 〜焦心〜
「目を通してみて、もし違っていたら言ってくれるか?」
「えっ? は、はい」
わけが分からなかったが、取り敢えず高橋さんの言うとおり、目の前に置かれた書類の表紙を捲った
こ、これは……
捲った次のページの目次を見ると、2月6日以降の遠藤主任の行動が細かく記載されていた。
「これは、独自に我が社で調査したもので。その1部を私が。そして、もう1部を高橋君が保管していた。勿論、複写も出来ない特殊な用紙になっているし、秘密厳守だから安心しなさい」
名倉部長は、私にそう言いながら大竹部長が取っていたメモを取り上げようとした。
「部長。これは、やはりまずいですからシュレッターしましょう」
「ああ。すいません……そうですね」
大竹部長も直ぐに了承して、メモをとっていたノートの1ページを破り取っていた。
そして、私が書類の内容を確認している間、誰もひと言も口を開かなかった。きっと、私に配慮してくれていたのだろうと思う。
6日のあの一件について、最初に記してある。
あっ。まゆみの証言もあった。
まゆみも、会社から聞かれていたんだ。でも、そんなことはひと言も言ってなかった。まゆみは、きっとこれは仕事の一環と解釈したんだろうな。
読み進めていくうちに、遠藤主任の私生活も少しだけ分かってしまった。
ひ、酷い……。
かなり遊び人のようで、毎日のように社内外の女子社員と合コンに行っていたり、何だか凄いことが書いてある
嘘でしょう?
2月10日の夜。遠藤主任が、私の家に来ている。
10日の金曜の夜は、確か……。
エッ……。
あの日は、高橋さんと明良さんと食事に行った時だ。
昼間、仕事中に遠藤主任が事務所に来たけれど、高橋さんがちょうど戻ってきてくれたから事なきを得たんだった。それで、食事の帰りは私が高橋さんの車を運転して……。
ハッ!
そうだ。あの時、高橋さんに家に泊まるように言われて、明良さんの家の近くまで送っていった後、高橋さんの家に泊まったんだ。
そう言えば……高橋さん。真剣に、私に泊まるように言っていた。それって、まさか……。
遠藤主任が、私の家に来るって知っていたの?
ひと通り読み終えたが、頭の中がパニックになったまま顔をあげた。
「間違いや付け足したいこと等があったら、遠慮なく言ってくれていいから」
高橋さんが、顔をあげた私に話し掛けてくれた。
「あの……此処に記載されている通りです」
書類の内容に間違いはなかったので、そのまままた高橋さんに書類を返した。
「分かった。では、名倉部長。後は、お任せしてよろしいでしょうか?」
「承知した。結論は、さっき招集したが、明日の朝8時半からの臨時役員会で。遠藤も呼んである。高橋君も出席だよな?」
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