新そよ風に乗って 〜焦心〜
明良さん……。
「貴博もね、前より少し変わったよ」
変わった?
「昔は、何ていうのかな……遠くばかり見てて、世の中のものに対して、いつも冷めてるっていうか、熱くなることはなかった。勿論、仕事には打ち込んでたから、仕事にはそれなりに熱くなってはいただろうけど」
そうだったんだ。
「誤解しないでね。だから、彼女も作らないで適当に遊んでたってところが多かったんだ。あのルックスと容姿だから、周りも放っておかないでしょ? そこら辺、相手も遊びだと分かれば、後腐れなくって感じだったんだと思う。でも、それが最近なくなった……かな? って思うんだ」
「そうなんですか?」
「陽子ちゃんのお陰かな?」
「と、とんでもない。そんなことないです」
「荒んでたから。貴博は……」
高橋さんが、荒んでた?
「あ、あの、それは、どういう意味……」
「何も、意味はない」
エッ……。
後ろから聞こえた声に、驚いて振り返ると高橋さんがキッチンの入り口に立っていた。
高橋さん……。
「おや。腹減りすぎて、貴ちゃんご機嫌悪いのか。もう少し、待ってろよ。子供じゃないんだから、待てないのか?」
「待てない」
はい?
間髪入れずに、高橋さんが真顔で明良さんに言い返した姿を見て、思わず吹き出しそうになってしまった。
「陽子ちゃん。分からず屋は、放置でいいから。先に進もうね」
「えっ? あっ、はい」
高橋さんを気にして振り返っていると、明良さんに顔を前に向かされて、手にアスパラガスを持たされた。
「まず、そのアスパラガスの茎の堅いところをカットしてくれる?」
「はい」
「俺は、オニオンスライスしてるから」
さり気なく明良さんが、まな板と包丁を目の前に置いてくれた。
「ありがとうございます」
アスパラガスの茎をカットして、ふと後ろを見ると、高橋さんの姿はもうそこになく、きっとリビングに居るのだろうと思って、少し背中の緊張感が取れた。
「貴博のこと、気になる?」
「あっ。いえ……」
明良さんを見ると、たまねぎを刻みながら微笑んでいる。
「昔、荒んでいたのは、貴博の心」
高橋さんの心?
「貴博もね、前より少し変わったよ」
変わった?
「昔は、何ていうのかな……遠くばかり見てて、世の中のものに対して、いつも冷めてるっていうか、熱くなることはなかった。勿論、仕事には打ち込んでたから、仕事にはそれなりに熱くなってはいただろうけど」
そうだったんだ。
「誤解しないでね。だから、彼女も作らないで適当に遊んでたってところが多かったんだ。あのルックスと容姿だから、周りも放っておかないでしょ? そこら辺、相手も遊びだと分かれば、後腐れなくって感じだったんだと思う。でも、それが最近なくなった……かな? って思うんだ」
「そうなんですか?」
「陽子ちゃんのお陰かな?」
「と、とんでもない。そんなことないです」
「荒んでたから。貴博は……」
高橋さんが、荒んでた?
「あ、あの、それは、どういう意味……」
「何も、意味はない」
エッ……。
後ろから聞こえた声に、驚いて振り返ると高橋さんがキッチンの入り口に立っていた。
高橋さん……。
「おや。腹減りすぎて、貴ちゃんご機嫌悪いのか。もう少し、待ってろよ。子供じゃないんだから、待てないのか?」
「待てない」
はい?
間髪入れずに、高橋さんが真顔で明良さんに言い返した姿を見て、思わず吹き出しそうになってしまった。
「陽子ちゃん。分からず屋は、放置でいいから。先に進もうね」
「えっ? あっ、はい」
高橋さんを気にして振り返っていると、明良さんに顔を前に向かされて、手にアスパラガスを持たされた。
「まず、そのアスパラガスの茎の堅いところをカットしてくれる?」
「はい」
「俺は、オニオンスライスしてるから」
さり気なく明良さんが、まな板と包丁を目の前に置いてくれた。
「ありがとうございます」
アスパラガスの茎をカットして、ふと後ろを見ると、高橋さんの姿はもうそこになく、きっとリビングに居るのだろうと思って、少し背中の緊張感が取れた。
「貴博のこと、気になる?」
「あっ。いえ……」
明良さんを見ると、たまねぎを刻みながら微笑んでいる。
「昔、荒んでいたのは、貴博の心」
高橋さんの心?