ホワイトビターショコラ〜幼馴染からの卒業〜
今まで九竜くんは告白されて「許嫁がいるから」と断っていたらしい。
彼女ではなく許嫁という、本当なのかわかりにくい返答に、適当にあしらわれたと感じる女子もいたのだとか。
でも、違った。
「どうして許嫁がいるからって、言わなかったの?」
「青葉には前に話したから。知ってて言ってくれたのなら、ちゃんと答えた方がいいかと思って」
「…っ」
…わかってくれたんだ、私の気持ち。
届かなくても、ちゃんと伝わったんだ…。
「ありがとう…」
「それ、くれたの青葉だったんだね」
「えっ、覚えてたの?」
「流石に部屋の前に置いてあるのは怖かったから…」
「あ、ごめん…そうだよね…」
下駄箱や机の上がもういっぱいいっぱいだったから、部屋の前に置いたけど…冷静に考えたら名無しのチョコが部屋の前にあるの恐怖だよね…。
「寮の誰かかなとは思ったけど…」
「うん、ごめん…」
「でも、それも受け取れない。ごめん」
「…ううん、ありがとう」
受け取ってもらえなくても、気持ちが伝わったから。
私の気持ちにちゃんと向き合ってくれたから。
それだけで嬉しい。
「また会おうね、九竜くん…!」
笑ってあなたにお別れを言えて、良かった。