スキがない総長の大胆な溺愛
蒼羽は絶対、自分の事を話そうとしない。

過去に何があったかも、春風さんとどういう関係なのかも。


蒼羽の機嫌がいい時に、それとなく話を振ってみるけど…茶化されて終わり。

むしろ、私がからかわれる事の方が増えた。



「蒼羽……ん?」



ハンバーガーのゴミが片付けられ、すっかり綺麗になった机の上に…

なぜかハサミが一本だけ置いてあった。

刃の部分が長い…すごく切れやすそう。



「もー、危ないじゃん。間違って怪我でもしたら、どうす……」



と、そこまで言った時だった。


『間違えて怪我をする』


その言葉が、頭の中を何度も木霊する。



「(今、蒼羽は寝ている。そしてハサミがある…)」



ドクンドクンと、心臓が大きな音を立てて唸る。

それが大きな音すぎて、他の音は何も聞こえない。

さっきまで聞こえていた蒼羽の寝息も、今じゃ全く耳に入らない。



「……っ」
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