スキがない総長の大胆な溺愛
「あれ…ここは、どこ?」
「ん?」
「私は…誰?」
「……」
記憶喪失をした人の典型的なセリフに固まったのは、なにも夜野くんだけじゃない。
私自身「何を言ってるんだ私…⁉」と頭が真っ白になった。
「確認するけど、自分の名前は分かる?」
「…すみません、わかりません」
「記憶喪失…?さっき頭をぶつけたから?」
夜野くんが珍しく眉間にシワを寄せて考えている。
決して慌てふためく感じではないけど、彼なりに困惑しているようだった。
「よし。じゃあ俺の家に行こうか」
「…へ?」
「記憶喪失の君を保護してあげる」
「ほ、保護…?」
え、あれ…?
夜野くんって、困惑してるんだよね?
なぜちょっとウキウキした顔をしているのでしょうか…?
「ご、ご迷惑になりますし…!」
「ならないから大丈夫」
さ、行こ――
そう言った夜野くんは、変わらず笑みを浮かべたまま。
クラスメイトが目の前で倒れ記憶喪失になったというのに、この落ち着きよう…。