スキがない総長の大胆な溺愛
「ん、~っ」



殴られた時に出血したのか、蒼羽とのキスは鉄の味がした。

苦(にが)い。

苦くて…熱い。



「はぁ、はぁ…もう、無理…っ」

「……仕方ないから…許してあげる」



そっと、私の後頭部から手を離す蒼羽。

次に自分のおでこの上に、手を置いた。

まるで自分の表情を隠すみたいに。



「蒼羽…傷が痛いの…?」

「……」



「待ってね、もうすぐ春風さんが来て病院に連れて、」

「っ!」



病院に連れて行ってくれるから――



そう言おうとした私を、体を起こした蒼羽がギュッと抱きしめる。

それは怪我をしてるとは思えない速さで…


全身を包まれた後に、やっと「え?」と。

自分の置かれている状況に気がついた。



「あお、ば…?」
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