スキがない総長の大胆な溺愛
「…なに」


「記憶喪失も…ウソなの。蒼羽に近づくための口実になるかなって思って…」

「…うん」

「本当に、ごめん…」



シュンと話す私を、蒼羽は黙って聞いていた。

そして「さっきも言ったけど」と、私の頭を撫でる。



「全部、知ってたよ。明里の記憶喪失の演技はヒドイ完成度だったし。すぐに見抜けた」

「え、」

「途中から普通に”優利”なんて言うし。記憶ありまくりだったもん」



そう言えば…そうだった。

優利にフラれたあの日…。

ショックで記憶喪失の設定なんて、忘れてたよ…。



「だから…俺からの最後のチャンスで、昨日ハサミを置いといたんだ」

「あ…私がお風呂から出た時に机の上にハサミがあったのって…」
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