スキがない総長の大胆な溺愛


「(そうか、朝優利にたくさん触ったから…きっとその時についちゃったんだね)」



これは優利の血。

夜野くんに襲われて流れた血。




「(私…パニックになって咄嗟に記憶喪失を装ったけど…利用できるかもしれない)」



優利を襲った相手と同居。それは、つまり…

復讐する機会が増えるということ。



「(家だと隙が出来て、油断してくれそうだし…)」



優利が味わった恐怖や痛みを、夜野くんに分かってもらい、謝ってもらう。

それが今の私が優利に出来る、唯一の事。



「大丈夫?調子悪い?」

「え、あ…違います。ごめんなさい」



我に戻ると、夜野くんは部屋を半分ほど出た場所で喋っていた。



「荷物の整理したいよね?」

「(荷物の整理っていうか頭の整理したい…!)」



勢いよく頷いた私に、夜野くんは「了解」と笑った。



「ちょっと俺はシャワー浴びてくるね」

「は、はい」



パタンと。

夜野くんが廊下を歩き、去って行く音が聞こえる。

< 21 / 235 >

この作品をシェア

pagetop