スキがない総長の大胆な溺愛
「(そうか、朝優利にたくさん触ったから…きっとその時についちゃったんだね)」
これは優利の血。
夜野くんに襲われて流れた血。
「(私…パニックになって咄嗟に記憶喪失を装ったけど…利用できるかもしれない)」
優利を襲った相手と同居。それは、つまり…
復讐する機会が増えるということ。
「(家だと隙が出来て、油断してくれそうだし…)」
優利が味わった恐怖や痛みを、夜野くんに分かってもらい、謝ってもらう。
それが今の私が優利に出来る、唯一の事。
「大丈夫?調子悪い?」
「え、あ…違います。ごめんなさい」
我に戻ると、夜野くんは部屋を半分ほど出た場所で喋っていた。
「荷物の整理したいよね?」
「(荷物の整理っていうか頭の整理したい…!)」
勢いよく頷いた私に、夜野くんは「了解」と笑った。
「ちょっと俺はシャワー浴びてくるね」
「は、はい」
パタンと。
夜野くんが廊下を歩き、去って行く音が聞こえる。