スキがない総長の大胆な溺愛
「……っ」



この時、蒼羽が緊張し始めたのが分かる。

蒼羽に強く押さえつけられた私の耳は、ちょうど蒼羽の心臓を捕えていた。


ドクドクと鳴る音は…今やすごい速さで、内側から蒼羽をノックしている。

そして蒼羽と私を、同時に揺さぶった。



「蒼羽と…最初、裏庭で話した時。私の心の中は優利だけだった」

「……うん」

「でも少しずつ、優利と蒼羽が半分ずつになっていって、」



そして、今は…



「蒼羽しか、いないの」

「…え?」

「私の中、もう蒼羽しかいないの…っ」

「っ!」



優利の事は、前と変わらず大事。

だけど…友達として大事なの。

だけど蒼羽は…全然違うんだよ。



――もう会えないかもしれないって思った時…どう思った?



さっき春風さんに言われた言葉を思い出す。



「もう蒼羽に会えないかと思うと…不安でたまらなかった」

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