スキがない総長の大胆な溺愛
「(蒼羽が…他の人と喋った……!)」
しかも、その顔には…少しだけ笑顔が浮かんでいる。
その顔を見ると…春の陽気に当てられてか、私の胸がほわっと温かくなった。
「(それに…)」
私が今いる位置は…蒼羽の後ろ。
前は、あれほど後ろに立たれる事を警戒していた蒼羽。
だけど月光に加入してからは、少しずつ、良い方向に変化しているみたいだった。
「蒼羽…今、楽しい?」
突然に聞いた私に、最初こそ驚く蒼羽だったけど。
「うん…」と、噛み締めるように、ゆっくりと頷いた。
「懐かしいよ。大狼にいた時の事を思い出す…。色々あったけど、楽しい事もあったなぁって」
「……そっか」
でも、
「これからも楽しくなるよ。だって蒼羽には、たくさんの仲間がいるでしょ?」
すると蒼羽は少し気まずそうな顔をして、照れ臭そうにそっぽを向いた。
「明里がいる。それだけで充分だよ」
そんな事を言いながら。
もちろん強がりだと分かっている私は、にやけた顔がバレないように、口に力を籠める。
「(意地張っちゃって)」
だけど、蒼羽が楽しそうなら…良かった。