スキがない総長の大胆な溺愛
「げ、っこう……?」
頭の中で、夜野くんの家で見た、ネットの記事を思い出す。
「(【月光】は、温厚で平和主義な族なんじゃ…?)」
それに、まだおかしな点はある。
「月光」の総長の名前は、嵐太じゃなかったはず。
確か…
「あ、なた…名字は……?」
「……」
その時。
私の髪を、嵐太が無理やり掴む。
そして無表情のまま、痛がる私を無視して、髪だけ持って無理やり立たせた。
「い…っ、たぃ…!!」
「痛いか、でもな。俺の名前を知らねーのはダメだ」
「は、なして…!」
嵐太は私の髪を持ったまま、自身の顔を近づけた。
「俺の名前はな、」
嵐太が自分の名前を言おうとした、その時だった。
「楽しそうな事やってるね」
この場の静寂を壊す、凛とした声が響く。
その声のした方を見て、嵐太は目を見開き、そして口角を上げた。