スキがない総長の大胆な溺愛
「お前、やっぱりアイツの女なんじゃねーか」
「え…な、んで……?」
皆が注目する方へ目を向ける。
髪の毛を離された私は、ドサッと地面に両手を着いて倒れた。
そこに近寄る、一人の男。
夜野くん――
夜野くんは私の頭から足まで何往復か見た後に、安心したように笑った。
「間に合ったみたいで良かった。大丈夫?立てる?」
「な…んで……来たの…?」
「うん。なんでだろうね」
眉を八の字にして笑った夜野くんの笑顔が、少しだけ切なくて。
少しだけ、泣きそうになった。
「さてと」
夜野くんは顔を僅かに後ろにやり、嵐太を見る。
「俺の物に手を出すって、意味わかってやってるの?」
「お前こそ。今この場に来るのがどういう事か分かってんか」
すると夜野くんは「んー」と間延びした声を出した後、
「俺の仕事が増える」と笑いながら答えた。