スキがない総長の大胆な溺愛
「食あたりですね」
「食あたり…」
どうやら優利は、悪い物でも食べたらしかった。
一気に気が抜けて、おばさんと一緒に椅子から転げそうになるのを我慢する。
そして、医者の話の続きを聞いた。
「しかし食あたりといっても軽い脱水が見られるので、3日ほど入院しましょうか。腕の傷もありますしね」
「先生、腕の傷とは…?」
「優利くんの右腕に切り傷があったんですよ。それで…」
医者がチラチラとおばさんを見ている。
そして「いずれ警察とお話するでしょうが」と前置きをした。
「優利くんは刃物で腕を切られています。傷が自然に塞がるかどうかも、入院中に診せて下さいね」
「刃物…!」
話す二人から一歩引いた位置にいる私は、震えるおばさんの背中を見る。
小刻みに揺れていて…悲しそう。
「(おばさん…)」
そりゃ、そうだよね。
自分の子が刃物で襲われたって知ったら…誰だってパニックになるよ。
「(もちろん、私も)」
好きな人が何者かに襲われたなんて。
絶対、許せない。