スキがない総長の大胆な溺愛


「本当は痛いんだよね?」

「…違う」




笑みを浮かべたまま「NO」を言い張る夜野くん。

私は床に転がっていたビニール袋を掴んだ。

その中には、夜野くんが病院で貰ったであろう消毒薬や塗り薬、替えのガーゼや包帯、更には錠剤の痛み止めが入っていた。



「私が…手当してもいい?」

「断ったら?」

「…お風呂の中までついていく」



そう言った時、夜野くんが目を開いて笑った。

そして観念したのか、ゆっくりと床に座る。



「意外に鋭いんだね明里」

「意外にってなに……て、明里?」

「うん。君の名前」



そう、だけど…。

そうなんだけど…。



「なんで名前で呼ぶの?」

「これからずっと一緒にいるのに”日向さん”は味気ないでしょ」



それに――と彼は続ける。



「俺は名字も好きだけど、明里って名前で呼ぶ方がもっと好きなんだよ」

< 45 / 235 >

この作品をシェア

pagetop