スキがない総長の大胆な溺愛
「本当は痛いんだよね?」
「…違う」
笑みを浮かべたまま「NO」を言い張る夜野くん。
私は床に転がっていたビニール袋を掴んだ。
その中には、夜野くんが病院で貰ったであろう消毒薬や塗り薬、替えのガーゼや包帯、更には錠剤の痛み止めが入っていた。
「私が…手当してもいい?」
「断ったら?」
「…お風呂の中までついていく」
そう言った時、夜野くんが目を開いて笑った。
そして観念したのか、ゆっくりと床に座る。
「意外に鋭いんだね明里」
「意外にってなに……て、明里?」
「うん。君の名前」
そう、だけど…。
そうなんだけど…。
「なんで名前で呼ぶの?」
「これからずっと一緒にいるのに”日向さん”は味気ないでしょ」
それに――と彼は続ける。
「俺は名字も好きだけど、明里って名前で呼ぶ方がもっと好きなんだよ」