スキがない総長の大胆な溺愛
確かに嫌だった。
もちろん言えないけど。
黙っていると、蒼羽は話を続ける。
「不謹慎だけど、あの広場に明里がいてくれて…嬉しかったんだよ」
「う、嬉しい?」
「明里がこの部屋を出て行ったんじゃなくて、奴らに連れ去られたんだって分かって…安心した」
だからお礼なんだ――と彼は言った。
「出て行かないでくれてありがとう、って言うお礼だよ」
「なにそれ…っ」
「さあ。俺も分からないや」
ふッと笑う顔が…柔らかくて。
凶悪な暴走族の総長でも、そんな顔をするんだって…意外だった。
「出ていかないよ…。私の記憶が戻るその日まで」
「うん、」
いっそ、記憶が戻らなかったらいいのね――
限りなく小さな声で呟いたそれは、私の耳に入らなくって。
「うわあ、ひどい傷…」なんて言いながら包帯を取った私を見て、
蒼羽は、ただ笑みを浮かべていたのだった。