スキがない総長の大胆な溺愛
髪が長くて綺麗な女の人が、電話をしながら歩いていた。
振り向いて、じっと見ると…女の人は電話を切った後、病院の中に入って行く。
「……」
なぜだか…その姿から、目が離せなかった。
「生吹…って、どこかで……」
どこだっけ…と、頭の中の記憶を探る。
どこかで見た名前。
どこかで聞いた名前。
「あれは、確か――」
喉まで記憶が上がって来た、その時だった。
「明里」
「…え?」
呼ばれた方を振り向くと、バイクに跨った蒼羽がいた。
「あれ…メール、まだしてないのに…」
「うん。何となく、そろそろかなって思って」
「…そっか」
ありがとう――と言うと、蒼羽は驚いた顔をした。
なんで驚いた顔…?
「私の顔に、何かついてる…?」
「いや…違うよ。逃げそびれたと明里は思ったんじゃないかって…」