スキがない総長の大胆な溺愛
「に、」



逃げそびれる?



蒼羽の言いたい事が分からなくて、首を傾げる。

すると蒼羽がバイクから降りて、私の元へ来た。



「いいの?このまま俺のアパートに帰っても」

「え……」

「明里を連れ去っても、いいの?」



ビー玉が、繊細に揺れている。

不安と期待、そして諦めを織り交ぜながら。



「(きっと蒼羽は、私が優利の所へ行きたいと知っていて…。

それで今日、ここに連れてきてくれたんだね)」



じゃないと、わざわざバイクを走らせてまで連れてこない。

アパートから近い病院を何件も通り過ぎて…やっとたどり着いた病院。

頑なに「バイクで送る」と言っていたのは、そういう事だったんだ…。



「(だけど…)」



目の前の蒼羽を見て、不思議に思う。

いつもとは違う、大胆不敵な笑みを浮かべていない蒼羽。

今の蒼羽に余裕がないように見えるのは…気のせいなのかな?
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