スキがない総長の大胆な溺愛
「うん。明里をからかって満足したから、俺も部屋に戻るよ」

「(やっぱり、からかってただけなのね…)」



バタンと蒼羽が出て行って、やっと落ち着ける。

眠るために目を閉じると、病室で見た優利の顔を思い出した。



「優利、何の夢を見てるんだろう…。

私も……」



同じ夢を見たいな――



そう言ったのを最後に、睡眠のため意識が途切れる。

するとタイミングよく、蒼羽が部屋に入って来た。

顔を真っ赤にしながら寝ている私を見て、部屋の中をキョロキョロしている。



「今日病院に行ったのに…薬はナシ」



はぁ。とため息をつく蒼羽。

だけど私の寝言を聞いて、一瞬だけ目を開いた。



「優利…」

「! 自分が受診してる暇はないか。自分の体よりも、優利って奴に会いたかったんだもんね」



――薬は?なんて。聞くだけ野暮だね



そう言って、蒼羽は手に持っていた物を机の上に置く。

それは、風邪薬と水の入ったコップ。



「こんな事だろうと思って、薬局で風邪薬を買っておいて正解だったよ」
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