スキがない総長の大胆な溺愛
「蒼羽…おはよう」



って、もう夕方だけどね。

部屋に入るやいなや、蒼羽は「いびきが聞こえなくて残念だったよ」と笑う。



「もう。……ん?」



「いびき」と聞いて、何かが頭に浮かんだ。

いびき…いびき………あ、いぶき!!



「そうだ、生吹!思い出した!」



頭の中で、病院での光景を思い出す。

綺麗な女の人が電話で「生吹くん」と言っていたのを。



「あの名前、どこかで聞いたことあると思ってたけど…。

思い出した、【月光】の総長の名前だ!」



春風 生吹(はるかぜ いぶき)!!



「……明里さぁ」



すると今まで寡黙を貫いていた蒼羽が、私の布団に近寄る。

そして怖い目つきで「よく聞いて」と声を落とし、私の両肩を掴んだ。



「何で明里がそんな事を知ってるのか知らないけど…全て忘れて。明里には無縁の世界だから」
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