スキがない総長の大胆な溺愛
「夜野…蒼羽……っ」
きっと、夜野蒼羽が優利を襲ったんだ。
理由は分からない。
だけど優しい優利が、何か悪いことをするハズない。
つまり。
優利は被害者で、夜野蒼羽が加害者。
ギリッ
「優利を傷つけた夜野蒼羽…。
絶対に許さない…!!」
下唇を噛み締める。
その行為を何度となく繰り返したせいで、唇の皮膚がブツッと破れ、口の中に鉄の味が広がる。
「苦い…」
だけど、噛み締めた唇を、離そうとは思わなかった。
優利は何倍も痛い思いをしてきたはずだから。
「優利…私があなたの仇をとるからね」
それだけ言い残して廊下に出ると、おばさんとすれ違った。
「学校に行くね」と言った私に、おばさんは力ない笑みで返す。
おばさんも優利の事にショックを受けているのか、ずっと沈んだ顔だった。
優利に、おばさん――
私の好きな人たちの顔を曇らす、夜野蒼羽。
「(許さない…)」
あなたがした事を、
絶対に許さないんだから――
と。
この決心が早くも揺らいでしまうのは、今から一時間後。
お昼休みの時に、事件は起こった。