スキがない総長の大胆な溺愛
『色白の一匹狼か。見物だな。

がんばれよ、夜野』



警察が俺の名前を繰り返し連呼していたのを聞いて覚えたらしい春風とは、

そのまま、それきり。

噂に聞く事はあれど、会う事はなかった。



それからは俺は有言実行し、たった一人の暴走族「白狼」の総長となる。



一人きりの暴走族は気楽なものだった。

なにより、あの「裏切られる感覚」にびくつく必要もない。


といっても…


万引き犯として陥れられたのはトラウマになっているらしく…

背後に誰かがいる事に、嫌悪感を抱いて、落ち着かない。



だけど、それくらいだ。

俺の日常が揺らぐのは、その程度の事で。

あとは平和なものだった。



あの日までは――


< 92 / 235 >

この作品をシェア

pagetop