ひだまりで誓う桜色の愛
半分死んだように生きていた。


日中は笑顔を振りまいても、独りになった途端、現実が押し寄せてくる。


どんなに治療しようが、君は選手生命を絶たれた。

回復しても、走れるようになっても、2度と晴れ舞台には立てない。


絶望感に襲われて毎晩枕を濡らした。


命と引き換えに人生の大半を費やした夢が潰えるくらいなら、生きる意味なんてない。

中途半端に生かさず、いっそのことひき殺してほしかった。

そう願ってしまうほど、人生を諦めかけていた。


そんなある日、沢村くんと出会った。


名前を呼ぶ声、笑顔、優しさ、温もり。
気づいたら、彼の存在が、生きる希望になっていた。


はじめは、どうしてこんなに惹かれるんだろうって不思議だった。

けど、一緒に過ごしていくうちにわかったんだ。


彼だけは唯一、私を私として見てくれた。


“不慮の事故により夢を奪われた悲劇のスプリンター”ではなく、千早 桜月という1人の人間として見てくれた。


絶望の淵から這い上がってこれたのも、生きようと前を向けたのも、沢村くんのおかげ。


彼はまさに、暗闇に射し込む一筋の光だったんだ。
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