ひだまりで誓う桜色の愛
思い出のエピソードを聞いても、いまひとつ緊張が抜けないのは、これから彼女の家に行くから。

それと……毎年彼女に思いを馳せていたから。


この地球上では、毎日多くの命が生まれては亡くなっている。

自分にとっては幸せに満ちた日でも、誰かにとっては悲しみに満ちた日。


道徳の授業で学んだとはいえ、14歳成り立てだった私には衝撃が強すぎて。

世間からの関心が薄れても、夜寝る前、ベッドの上で学校のある方角に向かって黙祷していた。


特に去年──事故に遭ってから迎えた誕生日以降は、毎月手を合わせている。

たとえみんなの記憶から消えてしまっても、風化させてはいけないと思って。


だから、打ち明けられた時は心底驚いた。



「陽菜にどう思われるかが心配?」

「だって、こっちが一方的に知ってるだけで、あっちは全然知らないから……」



信号が青に変わり、車が動き出した。


付き合えない理由を教えてもらったあの日──。



『でも、悔やむのはもうこれで終わりにしたい』

『だから……もしその日空いてるなら、着いてきてくれない?』
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