ひだまりで誓う桜色の愛
ランニング中のお兄さんや、春休みに入ったであろう小学生くらいの子ども達とすれ違うこと数分。



「おーっ! 増えてる!」



桜の木に囲まれた東屋が見えてきた。

先客はおらず、がら空きの長椅子には、薄いピンクの花びらが数枚落ちている。


先週はほとんど蕾だったのに。たった1週間でこんなに咲くなんて。

ここ最近、晴れの日が続いてたもんね。

木によってバラつきはあるけど、だいたい五分咲きってところかな。


風でしなる枝先を眺めていると、隣から「ねぇ」と話しかけられた。



「千早さんの下の名前って、桜に月って書くんだったよね?」

「うん。急にどうしたの?」

「いや、生まれた時もこんなふうに咲いてたのかなぁって」



あぁ、そういうこと。

確かに草花や自然に分類される漢字だと、どんな時期に生まれたのか、なんとなく予想つくよね。

和久井三姉弟も、漢字見た瞬間、暖かい季節と灼熱の季節に生まれたんだなってわかっちゃったもん。



「桜月って名前は、誰が命名したの?」

「両親。桜はお母さんで、月はお父さん。3月が予定だったから、春にちなんだ名前にしようとしてたみたいなんだけど……」
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