ひだまりで誓う桜色の愛
小学校時代の記憶から名前の由来の話を引っ張り出す。


あれは4年生か5年生の頃。

道徳の授業で、命の誕生のビデオ? DVD? を観たのがきっかけ。


好奇心旺盛な時期だったから、どんなふうに生まれてきたのか気になって聞いてみたら……。



「たまたま通った道に、めちゃくちゃ大きな桜の木が生えてたんだって」



早咲きの品種だったのだろう。満開を迎えていて。

圧倒的な存在感と美しさに、陣痛が来ているのも忘れてしまうくらい目を奪われたのだと。

運転中だったお父さんも、思わず『うわ〜! 綺麗〜!』と感嘆の声を上げてたんだとか。



「昔は今とは別の場所に住んでて、病院まで車で20分近くかかってたらしいの」

「20分はけっこう遠いね。たまたまってことは、近道してたとか?」

「うん。最初はいつも使ってる道を走ってたらしいんだけど、途中で破水しちゃって。少し渋滞もしてたから、急遽変えたんだって」

「じゃあ、そこに桜が咲いてたことは……」

「全然。初めて通ったって言ってたから」
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