ひだまりで誓う桜色の愛
病院に着いた後、すぐ分娩室に連れて行かれて、1日近く時間をかけて産んだという。

ちなみに月は、『病院に行く時によく見かけていたから』とのこと。父いわく、見守っているように感じたのだそうだ。



「見た人を虜にする桜と、見守る月か。名前の通りだね」

「えええ? そうかなぁ?」

「そのまんまじゃん。陽菜も真夏斗も夏芽も、千早さんの走る姿に惚れてたし。俺が泣いてた時も寄り添ってくれてたじゃん。素敵な名前だと思うよ」



横を向いた彼と視線がぶつかり、ドキンと心臓が音を立てる。


漢字と響きは気に入っている反面、口頭だと100パーセントの確率で5月生まれだと思われることが多かった。

自己紹介すると、『ややこしいなぁ〜』と冗談っぽく笑う声がよく返ってきていたから、直球で褒めてもらえたのは久しぶりで……。



「ありがとう……」

「ふふふ。耳真っ赤になってるよ」



指で耳の縁をちょんちょんといじられた。


あぁ、またいたずらっ子みたいに笑って。


そりゃあ、今まで何回かスキンシップはあったよ?

抱きしめてもらったり、手握ってくれたり、ほっぺた突っつかれたり。私も1時間前は背中擦ってあげたし。
< 140 / 142 >

この作品をシェア

pagetop