ひだまりで誓う桜色の愛
「沢村くん、鳥好きなの? 趣味バードウォッチング?」

「いやいや、そこまでは。鳥というより自然が好きなんだよ。家でも精油使ったり、お香炊いてる」

「精油って、ラベンダーとかバラの香りがするやつだっけ?」

「そうそう。さすが花好き。詳しいね」



笑いかけられた瞬間、ボンと顔が熱くなった。


好きな物、覚えてくれてたんだ。嬉しい。

今の私の顔、梅の花に負けないくらい赤くなってるんだろうな。


「そ、そんなことないよ〜」とぎこちなく謙遜して視線を逸らす。

するとその先で、車椅子に乗ったおばあさんを見つけた。



「こんにちは。あの、どうかなさいましたか?」

「ちょっと、タイヤが……」



様子がおかしかったので駆け寄ると、前輪が排水溝の蓋の隙間に挟まっている。

沢村くんと2人で車椅子を持ち上げ、平らな道に運んだ。



「ありがとうございました。助かりました」

「いえいえ。もしかして総合病院からいらっしゃったんですか?」

「ええ。どうしても梅の花を観たくって。お昼ご飯を食べた後、こっそり抜け出してきたんです」
< 25 / 142 >

この作品をシェア

pagetop