ひだまりで誓う桜色の愛
彼が言うには、大規模なパーティーは節目の年のみで、ほとんどが忘年会などの小規模なパーティーらしい。



「毎年豪華料理が食べられるのかぁ。羨ましい」

「昔の話だよ? 今は子供だけでも留守番できるから、大きいパーティー以外は参加してない」

「そうなんだ。じゃあ沢村くんが医者の息子って知らない人もいそうだね」

「いや、そうでもないよ。今もちょくちょく病院に通ってるし。最近また顔見知りの看護師さんが増えたんだよね」



苦い笑みをこぼした沢村くん。


なるほど。今年こそはってそういう意味だったのか。

だけど早速やらかしてるし、来年度の新人さんにも覚えられそう……。


長い階段を下りて1階に到着した。患者さん達に会釈しながら廊下を歩く。

あ……ここ、確か前にも……。



「懐かしいな。この廊下、千早さんのお母さんと一緒に歩いたっけ。覚えてる?」

「もちろん。覚えてるよ」



沢村くんのご両親がこの病院で出会ったように、私達も病院で出会った。

高校3年生の秋。
午前中の授業を休んで、母と2人で来院した時のこと。



『あの、何かお困りですか?』
< 28 / 142 >

この作品をシェア

pagetop