ひだまりで誓う桜色の愛
院内地図を見ていたら、制服姿の沢村くんが声をかけてきて。迷子になった私達をトイレに案内してくれたのが始まり。

今日と全く同じで、沢村くんは父親にお弁当を届けた帰り、私は診察を終えて帰る途中だった。


月日が経った今振り返ると、運命的で不思議な縁。

一見ロマンティックだけど……正直、沢村くんのことは、親切な高校生としか思っていなかった。


というのも──。



「お母さんの質問攻めが止まらなくて、『早く連れてってよ!』ってイライラしてた」



その日は朝から婦人科と精神科を受診しており、心身ともに疲労困憊。

さらに、当時私は車椅子生活を送っていたため、慣れない日常にストレスを感じていた。

顔色も悪く無表情、おまけに貧乏ゆすり。第一印象は最悪だったと思う。



「『学校はどうしたの?』って、気になるのはわかるんだけどさ、それでもあれは遅すぎ。亀の速度だったよ」

「他の患者さん達に抜かれてたもんね。間に合って良かったよ」



沢村くんいわく、最初はスルーしたという。

声をかけたのは、私が『漏れちゃう漏れちゃう』と繰り返していたのが聞こえたから。とのこと。
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