ひだまりで誓う桜色の愛
「バレンタインもホワイトデーも、毎年悩むよね」

「わかる。でも、今年は少ないから楽なほうだよ」

「そうなんだ。ちなみに、何個返す予定なの?」

「6個」



おにぎりがのどに詰まりそうになった。

沢村くんの人脈的に、余裕で2桁台いくと思ってたから意外すぎた。

家族で4つならば、恐らく残りの2つは……。



「あとは友達と千早さんの分」

「バイト先の人とか学校の先輩からはもらってないの?」

「ないよ」

「仲良しの看護師さんにも?」

「うん。事前に『お菓子は苦手なので』って断ったから。だから今年はすごく楽」



最後にポロッと本音がこぼれた。途端に想像が駆けめぐる。


きっとこれまでの人生で、うんざりするほどの量をもらってきたんだろうなぁ。


振り返ってみたら、看護師さんとも情報共有するくらい仲良しで、おばあさんへの対応もスマートだった。

年代は違えど、女の人と関わる頻度が多い環境で育ったら、扱いに慣れるのも当然。

多ければ多いほど自慢できるけど、その分お返しが大変だもんね。


おにぎりを食べつつ、モテる人も何かと苦労しているんだなぁとしみじみ思った。
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