ひだまりで誓う桜色の愛
父親かと思って振り向いたら、そこにはなぜか、私の頬を指で突っつく沢村くんの姿が。



「っな、なんでここに……」

「徘徊中。ってのは冗談で。友達にあげるお花の下見してた」



目を見開く私に、沢村くんはいたずらっ子みたいに笑っている。


まさか街中で2度も出くわすなんて。
やっぱり私達って運命なのかな。

いつもの自分なら、すぐ舞い上がっちゃうところだけれど……。



「千早さんはお父さんの付き添い?」

「うん。部下の人が寿退社するらしくて。相談も兼ねて着いてきた」



早口で答えた後、「うるさくてごめんね」と付け足し、鉢植えに視線を戻す。


彼の親切を拒否したあの雨の日。


『昼間はごめんね』
『もう回復したから大丈夫だよ』


バイト終わりにメッセージを送り、後日、電話でも改めて謝罪し、無事仲直りした。


のだけど……いざ顔を合わせると、悲しい顔がちらついてしまい、直視できず。

私の気持ちを汲み取って、1人になったタイミングで声をかけてくれたというのに……。
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