ひだまりで誓う桜色の愛
「なになに?」

「わがままになること」



頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。

1番ダメの間違いじゃなくて?



「私達ってさ、幼い頃に厳しい教育を受けたおかげで、謙虚で腰の低い立派な人間になったじゃない?」

「まぁ、テーブルマナーとか敬語とか、毎日レッスン受けてたもんな」



自分を立派だと思ったことは1度もないが、謙虚だとよく周りから言われるので頷いておいた。



「だけどその分、無邪気で純粋な子供時代が犠牲になった。特にお兄ちゃんは長男だったから、わがままもほとんど言わなかったんじゃないかなって」

「あー……」



声を詰まらせながら振り返る。


言われてみれば、「あれ買って」「これ欲しい」ってねだったこと、あまりなかったかも。

さすがに高校と大学は希望を聞いてもらえたけど、塾も習い事も、親の勧めで始めたもんな。



「お兄ちゃんは、相談に乗ったりお願いをきいてばかりで、いつも自分のことは後回し。もっと自己中になっていいんだよ」
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