ひだまりで誓う桜色の愛
両肩を掴まれて、ビクッと体が揺れる。



「どうしたの……?」



恐る恐る顔を上げると、沢村くんが心配そうな眼差しで私を覗き込んでいた。


大丈夫、大丈夫。

不安が襲ってきた時も、取り乱しそうになった時も。

天気が優れない日と同様、御守りを握りしめるように何度も唱えては乗り越えてきた。


なのに。



「っ、あぁっ……」



真っ直ぐと向けられた黒い瞳。

その中に映っていたのは、得体の知れない恐怖に怯える自分の姿。


現実を目の当たりにした瞬間、プツンとストッパーが切れてしまった。



「さ、わむらく……っ」



助けて。

そう言わんばかりに、涙で滲んでいく視界の中、懸命に手を伸ばす。

けれど……。



──ブーーーーッ‼



再び耳をつんざくような音が響いた。

咄嗟に耳を塞いでうずくまる。

しかし、1度暴れ出した心臓は収まるどころか激しさを増していく。



「いや……っ、やめて、来ないで……っ」



おぞましい記憶がフラッシュバックして、脳内になだれ込んできた。


シールドに張りつく水滴、1秒ずつ減っていく信号機。

そして──遠くから迫りくる水しぶきの音。


やめて、来ないでっ。いやだ、いやだ……っ!
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