ひだまりで誓う桜色の愛
微笑んだ顔のまま、沢村くんは緩やかに口角を上げた。


決めた。もうこの際、全てを話そう。


返事ももちろん大事だけど、今日は既に2回も心配をかけてしまっている。

さっきみたいに言いくるめて誤魔化しても、きっとまた同じことを繰り返す。


本気で治したいのなら、こっちも本気で向き合わないと。



「まずはじめに、誤解のないよう言っとくと、治療は順調に進んでる。薬で具合悪くなったことは1回もないから安心して」



前置きとして、治療には全く問題がないことを伝えた。

決して薬の効果が薄れているわけでもなければ、副作用で苦しんでいるわけでもない。


私が長年抱える不安の根本的な原因は──。



「今まで取り乱してきたのは、事故に関連するものを目にしてしまったからなんだ」

「事故って……2年前の?」

「うん。知ってた?」

「一応。当時ニュースにもなったし。確か千早さん、陸上の選手だったんだよね?」



ドキッと心臓が音を立てる。


沢村くんに話していなかった、私の過去。

あまり知られたくなかったんだけど……病院にはかれこれ20年近くお世話になってるし。看護師さんとも仲良しなら、小耳に挟んでいてもおかしくないか。


再び拳に力を込め、1度大きく深呼吸をして語り始めた。
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