とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
3年前、入社して初めてこの桜を見た時、胸が踊るような気持ちになり、何かが始まる予感がした。


「鳳条 龍聖」を忘れられるような、そんな期待感。


あれからもう3年も経ったんだ……


時の流れの速さに驚く。


でも、それだけの時間が通り過ぎても、残念ながら、私の中の「最後の思い出」が消えることはなかった。


最初の頃は必死に忘れようとしたけど、もがけばもがくほど頭に龍聖君が浮かんできて、それはとても無駄な努力なんだって気がついた。


今は無理に全てを忘れようとはしていないし、それに苦しめられている訳でもない。


自然な成り行きに任せるのが1番良いんだと思ってる。


龍聖君と過ごした大切な日々、その思い出はそう簡単には消せないって思うから。


こうして桜を見上げたら、子どもの頃のことが鮮やかに蘇る。


そう、私には他に、どうしても消せない思い出がある。
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