とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
花をつける春も、散ったあとでさえ、常に何かを教えてくれる桜の木が、自分が選んだ職場にもあるなんて……本当に私は「桜」に縁があるんだろう。


何だかとても不思議だ。


そして……今、また私の家族に大変な試練が訪れている。


ずっと私のことを支えてくれた大切な両親。


2人が守ってきた祖父の代から続く工場の経営が、存続の危機に陥っている。


取引先の急な倒産が響いてるらしいけど、何度聞いてもお父さんは私に詳しい理由を教えてくれなかった。


娘に余計な心配をかけたくないんだろうけど……


車の部品などを扱う、従業員10名ほどのいわゆる中小企業。


ものづくりに関して絶対に妥協を許さず完璧にこなす職人気質のお父さんと、それを支えたお母さんと、家族みたいな従業員達。


命とも言える製品と従業員の生活、そして家族、全てを守るために「今、どうしても工場をつぶしてしまうわけにはいかない」と言ったお父さんの気持ち。


それは私にだって痛いほどわかる。


両親のピンチは私のピンチ。


だから、一緒に乗り越えたいし何か応援したいと強く思ってる。
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