とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
「ということは、嫌いというわけじゃないのね。俊哉さんがもしあの子のことを嫌いじゃないなら、お願いしたいことがあります」


「な、何ですか?」


「琴音のことを鳳条グループの御曹司から奪ってほしいの」


その言葉にギョッとした。


あまりに唐突で有り得ないことだったから。


「何を言ってるんですか?! 奪う? 僕が?」


「そうですよ。あの子、見かけに寄らず男性が好きなんです。だからきっと、あなたのことも好きだと思うわ」


この人の真っ赤な唇が動くたび、なぜか怖いと感じてしまう。


「か、彼女は結婚してるんですよ。しかも、相手は鳳条グループの御曹司。僕など足元にも及びません」


自分がどうあがいても、彼には敵わない。


ネットで見た顔があまりにも美し過ぎて、同じ男性として愕然としたことは今でも覚えてる。


あの容姿を越えられる人物はどこにもいない。
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