とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
「こ、怖い?」


あまりにも予想外の言葉に驚きを隠せない。


怖いって、どういう意味なの?


「実は……僕は女性が苦手でね。女性恐怖症……なんて言ったらおおげさかな」


店長はフッと笑った。


「……正直びっくりしてます。綾井店長は普通に女性と話されてますし……」


誰にでも優しくて、1度も女性を避けてるなんて思ったことはなかった。


「そうだね。ずいぶん進歩したよ。子どもの頃は近づくことも無理だったから」


「そ、そんなに?」


「ああ。両親が大切に守ってきた「AYAI」を守るためには、女性が苦手なんて言ってられないからね。少しずつ克服して今に至る……って感じかな」


苦笑いする顔が少し切なく見えた。


「私、全然知らなくて……何だかとても驚いてます」


「そうだよね……もう、2人でゆっくり話すのはこれが最後だろうから、君にだけは全てを話すね」


「えっ……」


本当に聞いてもいいのかな?


深く考える暇も無く、店長は話し始めた。


「僕は、中学生の時に担任の女子教員からセクハラのようなことをされてね。学校で……色々強要されて」


「セク……ハラ?」


「ああ。もちろん、全部嫌がったし、逃げたりした。だから、結果的には何かあったわけじゃないんだ」
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