とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
「はい、どうぞ」


これは、私の好きな紅茶専門店のミルクティーのパウダー。


甘過ぎず、まろやかな口当たりが好きで、ゆったりしたい時のために買っている。


もちろん、自分自身のために。


私だけの、ほんの小さな贅沢。


「これ、すごく美味しいよ」


涼香姉さんは、何も言わずにカップを口に近づけた。


「うっ、やだ、熱っ」


「そんなに慌てないで、ゆっくり飲まないと」


「お湯が熱すぎるのよ。本当、気をつけてよね。私が猫舌なの知ってるでしょ? あっ、そうそう。私、この前1杯1500円のミルクティーを飲んだのよ。何ともいえない香りでね、美味しかったわ」


1杯1500円って……


「そ、そう。でも私は、これで十分満足だから」


「ねえ、そういえば、今あなたが働いてるお店、AYAIの店長って、社長の息子なんですってね?」


いきなり何を言い出すの?


「どうしてそれを?」
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