とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
「なあ、俺達、このまま……」


「この……まま?」


意識が朦朧とする中、私はかろうじて聞き返した。


「い、いや、何でもない。あと何回、気持ち良くなりたい?」


「もう……意地悪」


そう言いながらも、私は何ともいえない快感に包まれ、激しく体をくねらせながら、何度も何度も最高の瞬間を迎えた。


そして、ベッドに押し倒され、私の中にこの人の熱くて、固くて、大きなものが押し込まれた。


私達は……ひとつになった。


その後、2人は同時に絶頂に達し、夢のような時間は終わりを告げた。


全く余韻を味わう暇もなく、シャワーさえも浴びず、お互いにサッと着替えを済ませ、髪を整え、バッグを持った。


「最後の思い出だね、ありがとう」


「ああ、最初で最後。こっちこそありがとう。必ず、誰かと幸せになれよ」


「う、うん。あなたも……ね」


そんなやり取りをして、私達は笑顔で別れた。


豪華な調度品に囲まれたホテルのロビー。


大理石の床に響くハイヒールの音。


普段は滅多に履かないけど、今日だけは頑張ってオシャレした。


ただ、その音が今、どうしようもなく虚しく聞こえるのはなぜだろう?
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