とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
でも、これ以上は聞けないよ。


「彼女、本当にいないの?」なんて。


「今日はありがとう、龍聖のおかげで楽しい時間が過ごせたよ」


「こちらこそありがとう。またリベルテで集まろう」


「うわ~い、嬉しいよ~」


私達は、それからしばらくして解散した。


フラフラになった絵麻ちゃんを碧が送っていき、龍聖君は用事があるみたいでホテルに戻った。


みんな別々になって、私は近くに咲く満開の桜の木を見上げた。


「夜桜、綺麗……」


そのあまりの美しさに息を飲む。


夜の闇とほんのりとした明かりの中で、いつもは可愛い桜の花が、私の目にはなぜかとても妖艶に映った。


周りの景色や時間、そして、見る者の気持ち……


そういうものに見え方も左右されるのか。


この最高の瞬間……いつまでもずっと静かに眺めていたい。


「お願い……まだ散らないで……」


私は、そう願わずにはいられなかった。
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