とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
龍聖君やみんなと、次の約束はしていない。


きっとまた会えるだろうと思いながらも、もしこのまま会えなかったらどうしよう……そんな不安が頭をかすめた。


龍聖君と特別な関係になりたいなんて望んでない、ただ私は友達として繋がっていたいだけ。


今、彼女がいなくても、私には全く関係のないこと。


時が来れば……龍聖君はきっと誰かと結ばれる。


私なんか、女性として見てもらえるはずがないんだ。


それでいい、それでいいんだ……


もう何度同じことを自分に言い聞かせれば済むんだろう?


おかしいな……


嬉しいはずの桜なのに、なぜか急に切なくなって、心臓の辺りがほんの少しだけ痛くなった。


今日の桜は私に元気をくれないんだね。


この気持ちの重さ、何だか耐えきれない。


とにかく家に帰らなきゃ。


早く……帰りたいよ。


私は、目の前の桜にサヨナラを言って、1人夜の道をゆっくりと歩き出した。
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