ROCKな人魚姫《前編》
ゴールデンウィークは祝日も含めて一週間ほど休みがある。
バイトもしていないあたしは時間をもてあましていた。
愛子と恵は家が遠い。
エミも実家に帰ると言ってたし、特に予定も無かった。
だからって、ユウや高明くんに連絡する勇気はない。
休みのほとんどをベースと共に過ごした。
ベースを弾くと思い出される、ユウの顔。
ユウを思い出してドキドキすると、高明くんの顔が思い浮かぶ。
ベースだけに集中できない。
この気持ちをどうにかしないと、ベースにまで支障が出てしまいそうだった。
どちらの気持ちを恋って呼べるかはわからない。
大学に入って、
高明くんと出会って、
ユウやシノブとバンドを組むまで、
あたしは、ずっとバンドがやりたいだけの気持ちで突っ走ってきた。
誰かを好きになるなんて、いつぶりだろう・・・。
恋ってこんなに辛いものだったっけ…?