ROCKな人魚姫《前編》
あたし、何、変なこと考えてるんだろ。
練習に集中しなくちゃ。
本当に最近、バンドに対する集中力が欠けてしまっている気がする。
それをシノブに絶対悟られないように、再びベースの音調整をした。
「よし。練習始めよう。どの曲からあわせるの?」
やる気を見せるあたし。
シノブに曲の選択を促す。
「じゃあ・・・この前、微妙だったMy Loverからやるか?」
「おっけぃ。」
一言返事をすると、ベーシストモードに切り替える。
シノブのギターイントロから始まり、ユウのドラムが入る。
そして、二人の空間にあたしが入り込む。
いつになく、ユウのリズムが心地よくて、あたしのテンションも上がる。
そんなあたしたちのリズムを聞いて、満足そうにギターを奏でるシノブ。
アップテンポの曲。
あたしたちは、最後の一音まで走り抜いた。