ROCKな人魚姫《前編》
「かなり上達してんじゃん!!」
弾き終えて、驚くシノブ。
チラッとユウを見ると、ちょうどユウが目が合い、
「見返したね」
と目で会話した。
「これなら、今月のサークルライブに出られるな!」
まずは、シノブを納得させられた。
でも、ライブに出ると言っても、うちのバンドは3人。
肝心のボーカルがいない。
ギターもあと一人いないとLUNA SEAの曲は格好がつかない。
もう、ゴールデンウィーク明けの5月。
これから、メンバー探して、練習してで大丈夫なのだろうか。
不安に思って、シノブに聞いてみようとしたが、先にシノブが口を開いた。
「足りないメンバーは、俺の友達がサポートやるから。ボーカルともう一人ギター。」
「えっ。今から追加して間に合う?」
「ああ。俺の友達、かなりギターうまいから、1、2回練習すればすぐだよ。」
「そっか。」
ほっとしたが、シノブの言い方にちょっとイラっとした。
ユウは黙ってあたしたちのやりとりを見ていた。
やっぱりまだ、「見返した」という言葉は使えない。
少しの間ふてくされていたが、さらにシノブはあたしには想像がつかなかったことを考えていた。