ROCKな人魚姫《前編》
午後からの練習はユウがいる。
3人の部室も迫力はあったけれど、5人の演奏はさらにパワーが増している。
CDから曲だけ飛び出てきて、生音で聴いているような感覚に陥る。
その中であたしがベースを弾けていること。
ユウの叩くドラムでベースを弾いていること。
大好きなバンドの曲。
大好きな人。
今は片思いだけど、これであたしの恋が実れば、他に何も望まない環境だ。
ユウと会う時間が1秒増えると、1秒分、ユウのことが好きになる。
シノブに知られてしまったのなら、告白してしまいたい。
だけど、あたしには自信がない。