ROCKな人魚姫《前編》
「ユウを好きだってどうして決めたんだろうって。高明くんにしておけばよかったって後悔してる。」
黙って、あたしを見つめるエミ。
「…本当はまだれんの中で、好きな人も1人に絞れていないんじゃないの?」
…そうなのかもしれない。
エミに言われて気づいた。
無言のまま頷いた。
「私は、好きな人が二人いてもおかしくないと思うけどな。…さっきれんは、おかしいって言ってたけど。」
「えっ。そうかな。」
エミは続けた。
「だって、二人を一人に絞れないってことは、それぞれに違う魅力があるからでしょ?それを今すぐに1人に決めるなんて簡単なことじゃないよ。」
・・・そうか。
二人共、違う魅力を持っているんだ。
エミに言われるまで、そんなことにも気付かなかった。
1人に絞らなきゃいけないというのはあたしの固定概念。
無理にどちらかに決めなくていいと言われただけで、あたしの心はとても軽くなった。